ポンコツ女の大行進

いにしえの若手俳優ヲタクの昔話

巷で噂のバーイベとやら

わたしが現役の時にはそんな言葉はなかったんだけどさ、バーイベとかカレイベとかもう色んな言葉が誕生してるね?
バーイベってわたし普通にバーでイベントする事だと思って、昔はちょこちょこ小さなバー貸切でイベントする俳優とかいたけど最近流行ってるのかな?とか思ってたらバースデーの略だったよ。加齢って怖いね。
今年で芸能生活10周年なんだけど、すなわち芸能界に入って10回目のお誕生日で。プレゼントを渡してきちんと祝ったのは7回目くらいまでだけど、なんとなく節目だし、何より今私生活でかなり疲弊してどうしても顔が見たくなって、直前までどうしようか悩んだけどチケットを取ってしまった。
試されてるんだろうか、イベント開催日は彼氏の誕生日だった。
まー同じ誕生月だからおかしくはないんだけど何も10回目のお誕生会を彼氏の誕生日とかぶせなくても。笑った。

実は夏の終わりにひっそりと出演作を観に行ったので生の姿はそこまで久しぶりじゃなかったんだけど、カーテンコール以外の素の状態の彼を観るのは2年以上ぶりの事だった。
本当に何も変わってなくて安心した。
まぁわたしが見てきた7年弱で全然変わってないんだから残り3年でそんなに変わる事もないんだけれど。
相変わらずの俳優仲間たちに囲まれて、相変わらずおバカで、本人も一緒にイベントに出ていた俳優たちも、MCも、客も、全員楽しそうだし笑っていた。
現役でがっつり推してた時は常に周りにどう見られてるか心配だったし晒されたり特定されてないか警戒したし一番でいたくて全員いなくなればいいのにって思って一人で殺伐としてたけど、本来の彼のヲタクはヘアメしてでかい貢物抱えて物販積みまくってマウンティングするような若い女はほとんどいなくて、本人含めて昔馴染みの地元の仲間のようなコミュニティで構成されていたのだ。(まぁ当時はその馴れ合いが気持ち悪くて無理だったんですけど)
なんか平和だった。多分現場が平和になった訳じゃなくてわたしの心が平和になっただけだと思う。
ただただ彼が楽しそうでそれを見てるだけでとても満たされた。

イベント後にチェキが撮れた。
昔は6000円の物販写真を2セット買ったり2万くらいする厨二病全開のオリジナルデザインのアクセサリーを買ったりしないと写真なんて撮れなかったのに、今や1枚2000円。
それでも前回よりは値上げしたらしい。現役じゃなくてよかった。
開いたお財布が塞がらないところだった。1枚だけ、と思ったけど次いつ撮れるかわからないからもう1枚、合計2枚のチェキ券をそわそわしながら買った。

席は後ろの方だったけど、イベント中客席に降りてきた時に目が合った気がした。
でもわたしはヲタクの「わたしを見てアッて顔してくれた」と言う謎の自意識過剰発言が嫌いなので確証が持てるまではあまりそう言う事は言わないようにしている。

終演後の写真の列に並んでる時は初めて話をした時くらい緊張した。
いくら長年追ってたって言ったって、三年も顔を合わせてなくて、わたしが離れている間にがんがん2.5舞台出てヲタク増やしてたらもしかしたら認知切れてるかもしれないって不安もちょっとだけあった。
何せ彼は人の顔を本当に覚えない。ヲタクの顔はまだしも、数ヶ月前に舞台で共演した役者の名前すら違う座組に移るとすぐに忘れる薄情な男だ。

でもさすがに大丈夫だった。よかった。
めっちゃ久しぶりじゃん~~~ってすっごいすっごい驚いてくれたし喜んでくれた。
さっき座席で目が合った時は本当に合っていたらしく、さっき後ろの方に似た子いるけど人違いかなと思っていたと。
人違いかと思わせてしまうくらいわたしは彼から離れていたのだなぁと改めて感じた。
今何してるの?って聞かれて、普通に会社員をしているとしか回答出来なかった。
どうしても他の俳優に推し変した訳ではない事だけはわかってほしくて「他の俳優さんいってるとかじゃないんだよ??」と言う謎の弁解をしちゃったんだけど、「うんそれはわかってる」と即答する男。その自信はどこから来るのだろうか???
わたしが刀剣乱舞の俳優にいっているとか、そういう事は考えないんだろうか???
全然出演作を観れてない事を伝えたけど、年明けに脚本演出家デビューをするので、「俳優デビューも観てくれたんだから年明けの作家デビューも絶対観て欲しい」とものすごく強く言われた。わかったよ。

 

計算でやっているとしたら大人になったなぁと思うけど、チェキが終わってパーテーションからわたしが出ていった後、チェキを撮ってくれたスタッフの男の子に、
「いやー嬉しいなー、あの子10年前のデビューからずっと応援してくれてる子でめっちゃ久々に来てくれたんだよねー」って言っているのが聞こえた。
そんな事言われたらまた追いたくなってしまうからやめてくれ~~~~~
毎日毎日強欲に良対応を求めていたヲタクは低燃費茶の間に成り下がったのだった。

ちなみに、ポーズ指定がハートだったんだけどチェキ撮り慣れてない三十路のおじさんとおばさんによるハートはまじ全くハートじゃなくて笑った。
約10年前、初めてのウエストパワーでのイベントで撮った写真と隣に並べてみて、10年前の自分たちが本当に「ザ・若手俳優とそのヲタク★」って言うきゃっきゃ感があって面白すぎた。今回のチェキは本当にクラス会で再会したおじさんとおばさんのツーショ。

今、仕事が割としんどい。
転職して3年間、こんなにしんどいと思った事はなかったんだけど、最近職位が変わって責任やプレッシャーに毎日押しつぶされそうになっている。
数ヶ月前まで楽しいしやりがいあるし今の仕事最高ー!とか言ってたわたしがメンタルやられて吐き気で出勤出来なくなっている。
誰に言っても楽しい事とか趣味でリフレッシュした方がいいよって言われるんだけど、わたしは高校時代から10年以上、マジで「若手俳優の追っかけ」以外日常生活を忘れる程夢中になって打ち込める事をやってこなかった。
映画を観たり料理をしたり、そんな些細な趣味は色々あるけど、現実から逃れられる程わたしを揺るがす存在ではない。

この人に会いに来ると承認欲求がとっても満たされる。
ヲタク沢山の中で、固有名詞でわたしを認識してくれている事に満足する。
いつ会いに来ても、「頑張って」じゃなくて「一緒に頑張ろうな」って言ってくれる彼の事が本当に大好きだ。
あーーーーーーーとっても罪な男。
たかが俳優って言われても、わたしにとって未だにとっても大きな存在だ。
でもここに100%戻るのは怖くて出来ない。
0%にした後はずっと平和な日々を送っていたから別段支障がなかったけど、割とプライベートがしんどい今、結局自分には何もなくなってしまう事に絶望する。
中途半端なヲタクは嫌い、甘い蜜だけ吸いに来るヲタクは嫌い、散々自分で言っていた事だ。
でも今回久しぶりに会いに行った事で、彼を都合のいい逃げ場に使ってしまいそうになっている自分、超ださいなぁと思った。

それでもきっと、「また来てね」って言われたから、わたしはまた来てしまうのだろうな。

 

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