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ポンコツ女の大行進

気付けば妙齢の若手俳優ヲタク。

月刊「根本宗子」9.5号/私の嫌いな女の名前、全部貴方に教えてあげる。

月刊「根本宗子」
私の嫌いな女の名前、全部貴方に教えてあげる。
見てきた。

3日前までは根本さんの事を知らなかった。
Twitterで偶然舞台のタイトルを見かけて、長い作品名が面白くて調べたら、
偶然にも土屋シオンの初主演舞台だった。
観た人の感想を読んだら「アイドルとか芸能人を一度でも好きだった人は見ないと損」的な事が書いてあって、つまんなくてもシオン見に来たと思えばいいし、と思い見に行った。

色んな意味で、とても衝撃的で、息をするのが苦しくて、涙が止まらない作品だった。どんな感情で見てどんな解釈で作品を家に持ち帰るかが人によって全然違う内容だった。
わたしは割と号泣してしまったんだけど、当日券でバラバラの席で見ていた一般人の友達は終演後合流してわたしが号泣した事を報告したら、「どこに泣く要素が?!笑」って言ってた。
100席ちょっとしかない小さな劇場で、同じ時間に同じ作品を見ているはずなのに、すすり泣く声と笑い声が同時に発生する、いい意味でも悪い意味でも気味の悪い現象が発生した。
劇作家の鴻上尚史さんが、「能天気に笑う客席の一男性に殺意が芽生える。」と言う感想ツイートをしていたが、まさにわたしが抱いた嫌悪感がソレで。
わたしが苦しすぎて涙を流しているシーンで前の席に座っているおじさんたちは手を叩いて笑ってる。
男と女の違いなのか、年齢の違いなのか、ヲタクと一般人の違いなのか、それはわからないけれど、夏のおじさん特有のにおいが籠った劇場に発生する笑い声がわたしには気持ち悪くて仕方なくて、あぁ、演劇ってこういうものなんだ、と改めて感じた。

ものすごく文章を作るのが苦手なのであらすじ説明するの難しいんだけど、
劇作家の根本さん(根本宗子さんご本人が本人役をやっています)と同棲中の彼氏・某アイドルバンドのボーカル川西くん(土屋シオン)。
川西くんは、彼女の知らないところでバンドマンと繋がりたいキャバ嬢たちの集う合コンに参加する。

そのキャバ嬢たちが、今回根本さんがおっしゃっている「私の嫌いな女」たち。今まで人生で出会った嫌いな女をてんこ盛りで登場人物を作ったみたいです。
ボスに気に入られたくて冴えないモサ彼氏に合コンをセッティングしてもらう八方美人、キャバ嬢の狭いコミュニティの中で必死に虚勢張ってえばっているボス、わたし他の子たちと違うんですーお酒弱いんですーと合コンでも控え目を装う清楚系ビッチ、浅く広くで誰とも深い関係を持たない、誘われるから来てるだけ、的なツンデレ系ハーフ、LINEのグループにすら入れて貰えないのに毎回皆のツイートで飲み会を嗅ぎ付けて呼んでもないのに乱入してくる三十路越えのカラフルパニエ+プリントタイツの自称不思議ちゃん。
いるいる女のオンパレード。

客席の女たちは自然と頭の中に自分の周りの女たちを当てはめたんじゃないかなぁ。
わたしはこの中でいったら清楚系ビッチのポジションを目指しているにも関わらず実際はどれかと言ったら狭い交友関係の中でボス面してたいショボ女ってところでしょうか。
でも根本さんと一つ違うなって思ったのは、この根本さんが描く「嫌いな女」たち、わたしは誰一人心の底から嫌いだとは思えなかった。
皆見栄とかプライドとかにまみれて、周りと調和を取りたい、でも周りより優勢でありたい、そんなぐちゃぐちゃの気持ちの中から女はあーいう感じになっちゃう訳じゃん。
別に生まれ持ってあーな訳ではなくて、それぞれ何かしらの意思があってあの人格になっちゃう。
男にモテたい、輪に入れて欲しい、上から認められたい、皆目的があるんだよ。
あーいう女たちをケムシみたいに嫌がる人って余程パーフェクトな人間か他人と関わろうとする努力をせずに生きてきたメンタル引きこもり系なんじゃないかと思う。
嫌な女しか出てこない、誰にも感情移入出来ない、そんな男性客の反応に対して、周りにもいますこんな女たち、でも仕方ないの、こーなっちゃうの、そんな女性客の反応。ジェンダーに左右される感情、ものすごく興味深かった。

話が反れてしまいましたが、そのプライベートのやんちゃな川西くんのファンが合コンに乱入してくる。
俗に言うやらかしとか過激厨とか言う部類の子。
「川西くん何やってんの!メジャーデビューも控えた大事な時期にこんな事しちゃダメだよ?!川西くんは女の子の友達とかいないじゃん?こんな汚いキャバ嬢と合コンとかしないもん!世界一きれいな男の子なんだよ?!川西くんはわたしの心の支えなんだよ?!いつも僕がいるよって手を握って言ってくれるじゃん!」
みたいな典型的なやばい系ね。
それもドルヲタとか俳優ヲタからしたらあるある女なんだけど、それに対応する川西くんがシオンと重なって、応援しているアイドルや俳優たちと重なって、わたしは胸が痛くなった。
「それはお仕事の俺でしょ?そんな俺が好きなんでしょ?ファンなんだから表の顔の俺だけ見てろよ。わざわざプライベートまで介入してきて裏切ったとか言ってんじゃねーよ。ストーカーだよ?」
夢見てんじゃねーぞヲタクども、お前らの好きなアイドルだって裏じゃこんななんだよって言う根本さんなりのわたしたちへのあてつけ的な要素も含んでるのかなって。

で、合コンの途中でトイレに消えて清楚系ビッチと落ち合って、くちゅ音付きの割とガチなキスシーンを・・・可愛い系の役ばっか見てきたからびっくりです。
わたしは特別シオンのファンって言う訳ではないからそれを見ててもシオンが大人になっちゃったよーーうわーーんってなるだけなんだけど、シオンのファンはは合コンでキャバ嬢をトイレに連れ込んでちゅーとセックスするバンドマンシオンを見てどんな気分になるんだろうか、傷ついたりしないのかちょっと心配になった。
表ではアイドルバンドのボーカル、裏ではキャバ嬢と合コン三昧って言う役を表ではアイドル俳優をやってる土屋シオンにやらせたのって絶対意図的だよね。
川西くんを全く知らない俳優がやってたなら川西くんクズだわーで終わってたかもしれないけど鍋タレでD2でイケメン俳優カテゴリの彼が演じた事でものすごく生々しさを感じてしまった。
シオンにとってはすごく今後の糧になるやりがいのある役柄だとは思うけど、彼を応援してきたファンにとってはなかなかダメージが大きいのではないかなぁ。

その後トイレのキスを根本さんの芝居仲間であり従業員の女子に目撃されて報告されて結局浮気がバレちゃう訳だけど、またその後の逆ギレクズっぷりがすさまじい。
酔った勢いでちゅーしちゃっただけだよ許してって言うんだけど、根本さんにキスだけじゃなくてセックスもしたでしょって疑われてはじめは必死に否定する。
川西くん今まで寝た女の名前メモしてるから(最低)携帯見せて、わたしの名前の後ろに女の名前がなかったら信じるって携帯見られて、律儀にビッチ女の名前が書いてある。
なんで嘘つくの?→だってキスまでしかバレてねーのにわざわざ自分からセックスもしましたってバラす必要なんてねーだろ?!勝手に見てんじゃねーぞふざけんなよ!!!!!!ってDVですよ。浮気がバレて逆ギレしてDVするバンドマンの彼氏ですよ。ゲスの極み土屋。
同棲している二人の部屋でも、数時間しかはいてない靴下をもったいないから洗濯しないとか、そういう細かいネタが最近貧乏キャラで売ってるシオンと重なるとこがあったりしてエッジが効いてた。
あとガチギレして怒鳴っている川西くんめっちゃ怖かったけど履いてるパジャマがドナルドでなんかもう一周回ってこんなにクズなのに川西くん可愛く思えてきた。

世の中の女たちは多分彼氏に浮気なんてしてほしくないだろうけど、多分劇中の根本さんはやるならばれないようにやってって言ってた(気がする)。わたしもそっち派です。
見えないところでやるならどうぞご自由に。それは彼氏でも俳優でも。

最後の衝撃展開はまぁ伏せておきますが、彼女の元にアンリ(例の過激厨)が登場する。
その子が、
「川西くんの彼女だと思ってるのあんただけだから!!支えてきたとか勘違いしてるけどほんとに支えてきたのはわたしだから!毎回CD1000枚買って小さなライブハウスから彼を支えてきたのはわたしなんだから!」と訴える。
まーものすごく勘違いな主張ではあるんだけど、芸能人やアーティストを駆け出しの頃から応援してきた経験のある人なら誰しもが少しは抱えている感情だなと思って、同調する訳ではないけどアンリの気持ちに泣けてきてしまった・・・
支えてきたのは自分だなんてそんなに烏滸がましい事思ってないけど、昔自分が好きで今有名になった人とかをテレビとかで見ると、わたしが応援していたと言う事をこの人は覚えててくれてるのかなぁ、とか、そのくらいはちょっと思っちゃう。よね?
ほんとに愚かで、滑稽で、必死なんです。芸能人のファンなんて。
こんな事言ったら怒られるかもしれませんが。
ルール違反な応援をする人の擁護をする訳ではないけれど、好きで好きで好きすぎて、何がなんでもあの人のそばにいたい、支えになって欲しい、と言う気持ちのせいで時には自我を見失って暴走してしまう事もあるのです。今回のアンリちゃんのように。
スキャンダルが発覚すると「見損なった」「裏切られた」って離れていくファンも沢山いる中で、アンリちゃんは自分の求めてる「わたしの王子様・川西くん」を守る為にここまでの事をする。多分アンリちゃんは勘違い系キチガイメンヘラ女で、本当はメンタルもすごく弱いんだけど、川西くんが心の中にいる事でこんなにも強くなれる。心の拠り所をここまでして守ろうとするヲタクとしての強さ、生きる力をすごく感じた。まぁ実際こんな事あったらマジでやばいけど。
今回鍋中心に若手俳優もいっぱい見に来てるけど、彼らには是非そのへんを感じて欲しいなぁと思ったり。きみたちがどれだけわたしたちにとっての力になっているか、きみたちの言動一つでファンはこれだけの事をしてしまえるくらいその子の人生左右する事もあるんだよって。・・・うん重いね。

最後、根本さんが浮気相手のキャバ嬢に川西くんのいつもの姿を暴露してくの。
「自分の事をうつ病だと思ってる」
「曲がかけないと散歩に出かける」
「クリスマスとお正月を楽しみにしている」
「大きな仕事が決まると回転ずしに行く」などなど。
どれもものすごくしょぼくて、大人気アイドルバンドの川西くんとはかけ離れた小物感。
あまりの小物っぷりに、一つ一つに会場から男性客の笑い声が聞こえてきたけど根本さんが泣きそうになりながら一つ一つ浮気相手にそれを話すとこ、本当に泣けました。
自分だけが知ってる彼の姿を浮気相手に羅列してって自分が本妻だと言う事を誇示したい、根本さんの気持ちがわかりすぎてほんとにほんとに苦しかった。
どんなに小さな事でも、あなたは知らない彼の姿、わたしにとってはすごく大切な事。

合コンシーンでは一階で合コン、二階は違う次元扱いで根本さんの部屋だった。
彼女が部屋でくつろいでる時に裏で彼氏はキャバ嬢とあんな事こんな事・・そんな構図。
一方で、川西くんのファンと言う立場からしたら、普段は皆の王子様、KONOYO NO OWARINIのボーカル川西くんが自分たちの見えないところではキャバ嬢とあんな事こんな事・・・。
彼女と言う立場から見た表の川西と裏の川西、
ファンと言う立場から見た表の川西と裏の川西、
そんな二つの視点から描かれていたんだと思うんだけど、現に若手俳優のファンをやってる自分と、5年くらい前に付き合ってたリアル川西くんとの生活、どっちとも重ねてしまったので川西くんとアンリちゃんのやり取りも川西くんと根本さんのやり取りもものすごくリアルでした。
心臓抉られた。

特に起承転結のない群像劇と言うか、ありがちな日常を描いてそのまま終わるのかと思いきや最後は予想だにしてなかったとんでも展開へ。
わたしは根本さんの作品を観るのが初めてなのでいつものテイストと言うのがわからないけど最後あれを持ってきた事で他の作家を逸脱するような、独特な世界観になってたように感じた。

んー、自分でも引くほど感想がまとまらなかった・・・
考えれば考える程色んな解釈が生まれてくるんだけどほんとメンタル抉られる感じなのでもし興味のある人がいたらこういう女いるいるー!的なあるあると、「ヲタクの皆さん現実見てください」的な演劇関係者からの嫌がらせを楽しみに見たらいいと思う。
わたしはもし予定が合えばもう一回くらい見に行きたいと思ってるんだけど
日に日に当券並びの人数が増えていってるようなので、週末は難しいのかなぁ。