ポンコツ女の大行進

いにしえの若手俳優ヲタクの昔話

2.5次元と言う異次元

 

 ちょうど会社で図書券を貰ったので勢い任せに買ってみた。そもそもわたしは自分よりテニミュ歴やヲタ舞台歴の短いコラムニストやエッセイストがドヤ顔でテニミュの記事を寄稿している行為が好きじゃないんだけど、2.5次元って今が旬で批評雑誌の1冊まるっとこの特集が組まれる事なんてきっとこの先ないんじゃないかと思って思わず買ってしまった。

1冊全部が2.5次元について書かれているけど興味が無いカテゴリーのものや読みざわり(?)の悪い方の寄稿は少し飛ばして大体全部読んだ。「2.5次元を見る人」「2.5次元を創る人」「2.5次元を演る人」の3種類の方の考え方が一冊で堪能出来るのはすごく魅力的だった。演る人一つとっても、2.5次元俳優とまで言われている鈴木拡樹(以下拡張さん←人に話す時に鈴木裕樹との区別をする為に昔からそう呼んでいる)と、まだ20歳になりたてで役者になって数年の佐藤流司、その2人の考え方も本当に全然違くて、わたしたちにとっては2人とも向こう側の人間に違いはないけど、それでもこんなに違うんだとすごく驚いた。

拡張さんは今もうバブル絶頂で、Twitterでおはようとつぶやくだけで1万件のふぁぼがついて、昔の出演舞台の写真が余裕で万越えの相場で取引されるような超超人気役者である。失礼な事に特に興味を持った事はないんだけども、あれだけ沢山のライターが寄稿してる雑誌の中で皆拡張さんの事をまるで次元を自在に操る魔術師のように絶賛し、褒め称える。って言う事は、ただペダル(と言うか荒北さん?)のヲタクたちが妄信的に彼にハマっている訳じゃなくて、2.5次元業界における鈴木拡樹の絶対的ポジションが確立しているであろう事が雑誌全体から伝わってきた。

2.5次元俳優って個人的にこれってあんまり誇らしくない称号だと思っていたけど彼はもうプロ2.5次元だからそんなしょぼいものさしで自分と言う役者をはかってないんだろうな。
本人のインタビューの「原作モノの舞台のオファーを受ける時は2.5次元寄りにしたほうがいいのか3次元寄りにしたほうがいいのかお客さんに受け入れられやすいのはどっちか考える」的な発言に彼の原作モノを演じる事に対する想像を絶するプライドを感じるし、どなたの記事か忘れたけど「鈴木拡樹は二次元の物まねではなく作品やキャラに合せて小数点以下を調整していく」って称されてたのが最高にかっこいい。なんなんだよ小数点以下を調整していくって!?!原作モノ多くやっている若手俳優もただの二次元のマネ・キャラのマネをしていても三次元で演じる事の意味がなくなってしまう事まではわかって仕事していると思う。でも、小数点以下を調整する事まで考えられる俳優ってどのくらいいるんだろう。完全に2.5次元を求められる現場もあればほぼ鈴木拡樹で2.9次元くらいで出していった方が評価されるであろう作品もある。そんな事を拡張さんは現場入る度に緻密に計算しているのか。職人技だね。

あと、やまだないとさんの記事で「2.5次元を2次元プラス0.5次元ととるか3次元マイナス0.5次元ととるか」って言う話題があって、それがすごく興味深かったなと。原作派生か俳優派生かって話は言及した事あっても、それを2.5次元に対するマイナスとかプラスに置き換えた事ってなかったかもしれない。
要するに、「漫画(アニメ・ゲーム)キャラと言う2次元を俳優が演じる事によって少し立体化する=2次元+0.5次元」と考えるか「俳優と言う3次元の人間が漫画(アニメ・ゲーム)のキャラを演じる事で少し現実の存在から遠のく=3次元-0.5次元」と言う事だ。
この2.5次元旋風の火付け役となったテニミュ。あのコンテンツは元々+0.5と考える人しかいなかった。だって知名度のある俳優(≒既に固定ファンのいる俳優)が出ていなかった訳だから。初代の頃は、好きなキャラが、あの青学が自分の目の前に実在すると言う衝撃で成り立っていたと思う。本来2.5次元舞台の観客は大半がそうあるはずだ。だけど、昨今はそれだけではなく、「元々好きな俳優が2.5次元舞台に出る⇒予習の為に漫画を読む・アニメを見る・ゲームをする」と言う逆流状態も色々な所で起こってる気がする。
銀河英雄伝説とかなんて、キスマイ担は自分の好きなジャニタレがキャラクターを演じてる=3次元-0.5次元として2.5次元を楽しんでいたはず。わたしも、ディアミュなんかはまさにそれで、好きな俳優が出てる舞台の原作だからとりあえず読んでおこうと思って読んだらハマってしまった。
テニプリが好きでテニミュを見た⇒推したい俳優が他の2.5次元舞台に出る⇒予習⇒原作ハマる」のパターンで俳優ヲタから二次元ヲタに戻ってきた方は多いんじゃないだろうか。あと周辺環境で多いのが「1stシーズンの途中でテニミュ離脱⇒二次元ヲタに戻る⇒ペダル・乙女ゲームなどの沼⇒舞台化⇒あれっ?これって前にテニミュ出てた○○・・?」パターンね。おかえりなさいませって感じだね。
初代・二代目くらいで早々にテニモンを辞めた友達がペダステで英治さんと直也に再会して物凄くびっくりしてたのには笑ったし、鎌苅じゃない宍戸さんなんて見たくない!と言ってテニミュの元を去った友達がペダステ見て坂道くん可愛い~~って言ってるのも面白すぎた。その坂道くんは過去にあなたががけちょんけちょんに文句言ってた宍戸さんだよ。

わたしも、元々は+0.5の住人だった。テニミュに初めて興味を持ったのは俳優きっかけじゃなくて勿論原作を読んでいたからだし。でもきっかけのテニミュ以外の作品は全部-0.5だと思って今まで見てきたし、多分これからもそうだと思う。10年くらい前までがっつり二次元のヲタクだった癖にこんな事言うのもあれだけど、今はどんなすばらしい二次元を目の前で見せられても何にもハマる気がしない。10年間で、テニミュおよびその周辺の俳優たちはわたしの中から「(完璧な)二次元」と言う存在を葬り去ってしまった。

わたしは個人的に、好きな俳優には2.5次元舞台に出て欲しくない。

①そもそも三次元として好きなのだからそこから0.5を減らして欲しくない。
原作モノではない舞台だったら俳優本来の三次元⇒作品上の別の三次元になるだけでいいんだけど、2.5次元をやるとどうしてもわたしの好きな「らしさ」に自由がきかなくて二次元側に奪われてしまう。下手にらしさを残そうとすると原作信者からクレームが来る。どっちからのヲタクも獲得しようとした場合、前述の拡張さんのように「小数点以下を調整していく」緻密な作業が必要になってくるんだろう。

②人気原作の場合、チケットが取れない。
わたしはあまり困った事はないが(しいて言うなら忍ミュかなぁ)好きな俳優の舞台が見たいだけなのに、自分の好きな俳優自体がそこまで人気がある訳ではないのにその作品に人気がある場合、二次元からの動員も多くチケット入手が困難になる。まぁ主に今大変ご愁傷様なのはペダステ出演陣のヲタクの皆様なんだけれども。最初からいる総北キャストのヲタクはともかく、いきなりポッと出されてしまった染様や友常氏のヲタクなんてほんとにペダルに憎しみしか生まれないのではないかと思う。お悔やみ申し上げます。うたプリが舞台になる未来とか想像するだけで世界戦争起きそうだし、ハイキューとか今から皆胃薬常備しててかわいそう。

③日常的にキャラを重ねて見られる、卒業してもイメージを引きずられる。
一度代表作になる2.5次元作品のキャラを演じてしまうと、公演が終わっても、また次の代に交代してもずっとそのキャラのイメージを持たれ続ける。そのキャラ人気で俳優としての人気を保っている人もいるから一概に悪いとは言えないかもしれないけど、作品内でニコイチだった(もしくは王道CPとされていた)役を演じた2人が、舞台を降りても仲良くいる事を強要されたり質問コーナーとかで「○○くんとはプライベートで遊びに行ったりしますか?」と仲良くもないのに聞かれたりしていて本当に大変だなぁと思う。
青学が四代目になろうとしている時期に鈴木と足立がでグッコンを歌わされていたり、卒業して2年が経つ今も推しがいけいけどんどんを強要されていたりする光景を見るといい加減にして欲しいと思う。
王道CPとされている2人がどう考えても役者として仲はよくないだろうにTwitterやブログでビジネスホモ2ショを健気にアップし続けて二次元ヲタを裏切らないように努力する事も2.5次元俳優にとっては大切な営業活動かと思うけど、役者自体が好きなヲタクにとっては見ていて結構辛い事もある。

だからわたしは推しに早く忍ミュを卒業して欲しかったし、これからも2.5次元舞台にはあんまり出て欲しくないと思っている。もうほとんど追っかけてないからわたしはもう文句を言う権利なんてないけど。
2013年の終わりに、彼は「今までは原作モノとか同世代の若手が沢山出てて自分が先輩になるような現場が多かったんだけど来年(2014年)は大御所やベテランの方に揉まれるような今までと違う毛色の舞台に沢山出ます(出たいです?)」と言った。でも結局今までとあんまりラインナップは変わらず、俗に言うイケメンワラワラ舞台やらゲーム原作舞台やらも多かった。2015年になってからは、今のところイケメンワラワラ、ゲーム原作、イケメンワラワラと言う具合なので、まぁ突然レミゼやロミジュリなんかに抜擢される訳ないのはわかっていても、違うフィールドに世界を広げて欲しいなぁといちヲタクとしては感じる。
推しに限らず2.5次元から生まれて2.5次元で人気を保ってきた人がそこ以外に仕事を広げるのって本人の能力があったとしてもなかなか難しいのかなぁって感じる。それでも水田や古川の今の仕事を見てると、どうにかなる人はなるんだなぁと思うよね。城田とか工とかはもう別次元だけど。

 

そんな中わたしが今後どうなっていくのかすごく気になるのがおごたんさん。
プリンスオブテニミュリョーマの化身、小越勇輝と言う名の2.5次元・・・色んな異名を持つ彼は、ご存知の通りテニミュの2ndシーズンで4年間リョーマを演じた。6人のリョーマがバトンを引き継いで全国大会決勝まで戦った1stシーズンと違い、小越はたった1人で地区予選から全国決勝までを戦い抜いた。16歳の時点で既にすごく能力の高い子だったけど、20歳の小越は物語のリョーマ以上に強くたくましくなっていったと皆が感じていたと思う。
わたしも小越は歌もダンスも芝居も出来て努力家で可愛くて素晴らしい役者だと思っているけど、2ndシーズン終盤の小越勇輝絶対神論みたいな風潮がどうも好きになれなかった。小越がすごいし小越が上手いのはわかるんだけど、小越こそテニミュのシンボル!小越万歳!!!みたいな空気がテニミュ界全体に漂ってる感じがすごく居心地悪かった。6人で物語を繋いだリョーマより1人で物語を完成させた小越のがすごいって言うのも間違っているし、ただ主人公ってだけでほとんど他の青学メンバーと平等だったリョーマの存在は2ndシーズンでは抜きん出てしまってるような印象を受ける。越前リョーマを演じる小越勇輝と言う存在を崇拝し、尊敬し、忠誠を誓わなきゃいけないみたいな存在になっていた気がする。1stのリョーマは座長といえども華があって可愛がられればそれだけで絶対的な価値があったのに。
よくも悪くも、小越と2.5次元ブームが越前リョーマという座長の存在意義を変えてしまったなぁとこの前見た3rdシーズンのドキュメントの古田くんを見てすごく感じた。彼が見ている、「リョーマを演じた先輩の背中」って小越なんだなぁと。先代がプリンスオブテニミュだったせいで「リョーマだから一番しっかりしなくちゃいけない」と言うプレッシャーと戦っている古田くんは大変だなぁ。

サイケデリックペインで新しい小越の姿が見れる(しかも三代目の通と共演してる事で古参テニモンは色々感慨深いらしい)と言う事だけど、テニミュをずっと見ていてもサイペに足を運ぶ人は一部だろうし、4年間テニミュを見続けていた人の大半はこの先も小越の事を「4年間リョーマをやっていた小越勇輝」として見続けると思う。
彼の事は全然詳しくないけど、少年から青年に変化する重大な4年間をテニミュブランド、越前リョーマブランドにがっつり固められていた小越がどう2.5次元を乗り越えた役者になっていくのかがすごく気になる。

キャラ人気に頼っていられる分2.5次元舞台を演じる方が楽だろうと言う意見もあるとは思うけど、純粋に芝居以外で色んな所に気を遣わなきゃいけない事を考えると、2.5次元舞台・2.5次元俳優ってそうではない芝居の世界よりも大変な事も多いなぁと感じる。
本人がどっち方向に進みたいのか、事務所がどのフィールドで売っていきたいのかにもよるけど、40代50代のキャラクターが沢山出てくる作品なんて限られているから、20代のうちに2.5次元として消費され続ける若手俳優たちはどこかで失われた0.5を補填する作業をしないと将来仕事がなくなってしまうよね。


二次元として興味のある少年・青年マンガやゲームはなくてもわたしは少女マンガが三度の飯よりも好きなので早くご近所物語天使なんかじゃないグッドモーニングコールを実写化してくれ。
実写化は願ってるけど誰をキャスティングしても文句を言う自信がある。
アンパンマンミュージカルとクレヨンしんちゃんonステージはキャスティング済みなので企画をお持ちの制作様がいたら声をかけてください!